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2022.04.06メディア掲載

食品新聞に企業活動におけるSDGs・防災教室の取り組みについての取材記事が掲載されました

企業活動の根幹にSDGs対応

尾西食品 古澤紳一社長
「誰ひとり取り残さない保存食の提供」



アルファ米のトップシェアを誇る尾西食品は、「フードダイバーシティ」を掲げ、アレルギー対応やハラール対応などの非常食も展開する長期保存食の総合メーカーだ。災害時でも、“誰ひとり取り残さない食の提供”を通じて持続可能な社会の実現を目標としており、こうした企業活動そのものがSDGsへの取組みとなっている。そこで古澤紳一社長にSDGsの取組みを中心にインタビューした。(聞き手 金井順一)

SDGs達成を念頭に事業活動を

…ここ数年、生活者の防災意識が高まっていますね。


古澤 当社は1935年(昭和10年)に創業し、80年以上の歴史があります。その間、阪神・淡路大震災、東日本大震災と大地震が発生し、それまで官公庁の備蓄食に過ぎなかった非常食が、二度の大震災を経て、特に首都圏の企業や個人に認知され、生活者の防災意識が高まってきました。また、一昨年から新型コロナウイルス感染症が拡がり、緊急事態宣言により外出が制限されたこと、昨年東日本大震災から10年目という節目の年を迎えたことから、家庭に非常食を備えるケースが加速し、更に防災意識が強まっているようです。

…企業経営においては持続可能な開発目標(SDGs)への取組みが求められていますが、尾西食品のSDGsへの対応を教えて下さい。

古澤 当社は普段の生活だけでなく厳しい災害時においても、“誰ひとり取り残さない食の提供”を目指しています。そのため常にSDGs達成を念頭に置き、持続可能で多様性と包括性のある社会実現を目指し、食べる人の幸せを描きながら食の美味しさを追求しています。
当社は、企業理念として「安心と思いがけない幸せを提供します」と掲げています。言い換えれば、「どんな時にも美味しい食により喜んでもらおう」ということです。そして11年前の東日本大震災以降変化してきたニーズに対応しようと、老若男女、アレルギーをお持ちの方、ムスリムの方など、より多くの方「誰ひとり取り残さない」という考えを強く持つようにしています。当社定番のアルファ米の需要は伸びていますが、パンやクッキーなど生活者が求めるものの広がりもあり、いろいろな種類の美味しい長期保存食を提供することを目指しています。

ノンアレルギー食は重要なSDGs

…ノンアレルギー食への対応を積極的に進めていますね。
古澤 当社には70年以上の開発ノウハウがあり、災害時など食事の選択肢が少ない場合にも、食物アレルギーを持つ方にも安心して食べてもらえるよう、アレルギー対応製品(特定原材料等28品目不使用)を用意しています。特に最近はアレルギー対応の要望が高まっており、当社製品の約3分の2がアレルギー対応製品になっています。ごはんやパン、おやつなど豊富な種類を揃えて、子どもたちにも喜んでもらっています。
アレルギー対応製品においては、食物アレルギーを持つ方が、毎日の食事でも家族と一緒に、友達と一緒に同じものを食べられる喜びを感じてほしいという想いから、「おにしのあんしんチョイス」ブランドも立上げました。昨年末のクリスマスには、その「おにしのあんしんチョイス」をご利用いただいている食物アレルギーのお子さまをもつご家庭11組を招待し、親子によるクリスマスケーキ作り体験会を開催しました。参加くださったご家族には国産米粉100%の米粉パンとココナッツのクリームを使ったクリスマスケーキ作りにチャレンジしてもらいました。

「おにしのあんしんチョイス」は、単にアレルギー対応商品を売りたいからのみで展開しているのではなく、企業活動の根幹としている、災害時に「誰ひとり取り残さない」を実践する事で、「尾西食品の商品なら安心できる」「分かりやすい」「いざとなったら困らない」といった信頼感に繋がり、「備蓄の際には尾西食品の商品を選んでいただく」という流れになれば良いと考えております。アレルギー対応食の提供は、当社にとっては非常に重要な活動であり、こうした会社活動そのものがSDGsへの取組みだと考えておりますので、今後もアレルギー対応の製品を更に増やし、誰でも美味しく食べられる非常食を提供していきたいと思っています。

…ハラール食品への対応を進めていますね。

古澤 日本のグローバル化にともない、今ではハラール認証を取得した食品の需要が増加しています。そこで当社でも災害時にも心配なく食事をとっていただけるよう、ハラール認証取得商品を製造しています。
2015年にハラール認証を取得して販売を開始し、20年には新たなハラール認証商品としてムスリム向けにエスニック風味の本格的な非常食2品を発売しました。インドネシアやマレーシアの伝統的チャーハン「オニシのナシゴレン」と、インドや中東で食べられているスパイスを利かせた炊き込みごはん「オニシのビリヤニ」がそれで、現在はライスクッキーなどもハラール認証を取得し発売しています。今後も会社の理念である「安心と思いがけない幸せを提供します」を念頭に、より多くの方に安心して食べていただけるような製品を開発して行きます。

未来を担う小学生へ「防災教室」
 

…「防災教育」への取組みを始めましたね。

古澤 当社は、地域社会や自治体と連携のもとで、子どもたちに防災や備えの大切さを体験してもらいながら身近に感じてもらう活動を進めています。
最近では、小・中学校から防災訓練や防災教育と絡めて話しを聞きたいというお問い合わせが増えてきました。これまでいくつかの小学校との取り組みを始めており、アルファ米の作り方をレクチャーしたり、実際に非常食を作って試食したりする教室を開催。子どもたちにはアルファ米の製造工程や、長期保存の技術、宇宙日本食としても採用されている事などを説明しています。学習指導要領が改められ、授業に防災教育を組み込む学校が増えており、具体的に非常食メーカーの声を聞いてみたいという要望が出てきているようです。

災害で助かった大切な命が、備え不足や健康二次被害などによって失われる前に、早い段階から防災の知識を身に付け、いざという時に役立ててもらおうと、未来を担う小学生向けの防災教室を始めました。防災教室を通じて、防災や非常食に興味を持ち、日頃から災害に備えることの大切さ、非常食を食べてみるという経験の必要性や、非常食の上手な備え方などを学ぶ機会としてもらえればと思っています。

環境に対する教育が良い例で、右肩上がりで浪費するのが当たり前だったバブルの時代とは異なり、若い世代の環境への意識が変わってきています。環境教育と同じように、当社は防災教育でも中身のあることをしっかりやっていきたいと思っています。長期保存食の提供だけではなく、いざという時に食で困らないような方法を提供しなければなりません。そのためには環境教育と同じように、防災教育の重要性を感じており、その一翼をメーカーとして担っていければと考えています。

…コロナ禍の「防災教室」には壁もあるようですが。

古澤 本来なら小学校に訪問し、非常食を一緒に食べてみることが理想的ですが、新型コロナの影響でそれもできなくなりました。そこでコロナ禍での新しい防災教室として、オンラインでも受講可能な教室を各教育機関に提供します。4月以降、全国の主に小学校を中心に防災教室の募集を開始する予定です。このオンライン防災教室を通じて、SDGsの課題解決や探究学習に取り組んでいらっしゃる学校からの、企業取材や非常食についての講師依頼など、教育現場の要請に応えていきたいと考えております。

…非常食では初めてエコマークを取得しましたね。

古澤 エコマークは環境への負荷が少なく、公益財団法人日本環境協会が環境保全に役立つと認めた商品につけられる環境ラベルで、非常食では初めて当社が取得しました。エコマーク取得により、4月以降順次、アルファ米17品や携帯おにぎり4品、尾西のひだまりパン4品において、再生プラスチックを使用した包装資材に切り替えて行く計画です。今ではエコマークが環境を意識した商品選択の目印になっており、包装資材に再生プラスチックを取り入れることで資源循環・環境負担低減につなげていきます。

「CoCo壱番屋マイルドカレー」もアレルギー対応に



…昨年から「CoCo壱番屋監修 尾西のマイルドカレーライスセット」発売しましたね。

古澤 当社は昨年4月に壱番屋さんとのコラボレーション商品として「CoCo壱番屋監修 尾西食品のカレーライスセット」を発売しました。ココイチさんが監修したカレーライスを災害時でもいつもと変わらず食べられるように、ローリングストックを推奨します。アウトドアや旅行、外出せずに簡単に済ませたい日のランチなど、日常の幅広いシーンにもおすすめの商品です。温めなくても美味しいカレーですが、お湯を注いだ場合はアルファ米とカレーを一緒に温めることができるパッケージなので、自然な温かさでカレーライスが楽しめます。
また第2弾として今年3月より「CoCo壱番屋監修 尾西のマイルドカレーライスセット」を発売しました。これは辛さをひかえた味で、レギュラー品と同様にアレルギー物質(特定原材料等)28品目不使用とし、辛さが苦手なお子さまにも安心して美味しく食べてもらえるようにしました。

【古澤紳一氏プロフィール】
1964年生まれ、埼玉県出身、2004年亀田製菓㈱入社、08年執行役員マーケティング部長、10年執行役員海外事業部長、17年常務執行役員経営企画本部長、18年執行役員国内事業部グループ統括、19年執行役員商品本部長、20年尾西食品㈱代表取締役社長(現職)。